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脳性麻痺は治る?脳性麻痺の種類や原因・治療について解説

[2024.08.31]

「脳性麻痺は治るの?」
「脳性麻痺の原因や治療について知りたい」
とお考えではありませんか?脳性麻痺は、生まれてくる子どもの約1,000人に2人前後の割合で発症しています。その中で、早産児では最高15%に罹患する脳機能障害です。本記事を見てるお母様やお父様の中には、脳性麻痺が治るのではないかと思っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は

  • 脳性麻痺は治るのか?
  • 原因
  • 症状や治療法

にスポットをあてて解説します。

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本記事について
※脳性麻痺の症状は本記事に記載されている項目が全てではありません
※治療や診断については医師にご相談ください

脳性麻痺とは

脳性麻痺は、お母さんのお腹にいる時から生後4週間までに生じた非進行性の運動及び姿勢の異常です。また脳性麻痺の症状は、2歳までに発症すると定義づけられています(公益財団法人日本産婦人科医会「脳性麻痺の発生要因」

ここでは、脳性麻痺について下記3つを解説します。

  1. 原因
  2. 症状
  3. 治療

原因

脳性麻痺は、複数の因子が関与されていると考えられ必ずしも原因が確定されるわけではありません。場合によっては、原因の確定が難しいケースもあります。とはいえ、予防法があるのではと考えている方もいるのではないでしょうか。

脳性麻痺の原因は、下記の通りです。

発生時期 原因
妊娠中
  • 脳の中枢神経系奇形
  • 遺伝子、染色体異常
  • 感染症
出生時期
  • 低酸素性虚血性脳症
    →脳へ酸素が届かず脳が損傷されることです。以下の要因で引き 起こされます。
    ・新生児仮死状態で生まれた
    ・新生児呼吸障害
    ・けいれん
出生後
  • 生後に発生する脳損傷
    ・頭蓋内出血、頭部外傷
    ・中枢神経感染症
    ・呼吸障害、心停止
    ・てんかん
    ・核黄疸・ビリルビン脳症など
  • 未熟児、早産
    ・脳室内出血
    ・脳室周囲白質軟化症

現時点で、確実な予防法はありませんが早産や未熟児・感染症にかかったから必ず脳性麻痺になるといったことではないと認識しておきましょう。

予防法の一例としては早産にならないよう日常生活への配慮や、感染症の予防などです。

症状

脳性麻痺の代表的な症状の特徴をまとめました。

  • 体の硬さ
  • 手足の麻痺
  • 反り返りが強い
  • バランスが悪い
  • 知的障害
  • 噛んだり飲み込む力の問題
  • 手足の不随意運動 など

脳性麻痺となった場合、多くの人が手足が動かしにくいといったイメージを持つのではないでしょうか。脳性麻痺の症状に、進行性の病気や一時的な運動障害や,将来改善すると予想される運動地帯は含まれません。

そのため、症状が当てはまるといって脳性麻痺かもしれないと自己判断せず、まずは医師に相談しましょう。

治療

脳性麻痺の既存の治療は、下記の通りです。

  • 理学療法
  • 作業療法
  • 言語療法
  • 薬物療法
  • ボツリヌス毒素治療
  • バクロフェンの髄腔内投与

治療法を的確に医師に提案してもらう為にも、本人がどのようなところに困っているのか、また家族や支援者からの視点で本人の困りごとを明確にしておくとよいでしょう。

治療の詳細については、本記事内「脳性麻痺の治療法」で解説していますので参考にされてみてください。

脳性麻痺4つのタイプ

ここでは、脳性麻痺の下記4つのタイプについて解説します。脳性麻痺とひとくくりにせず、タイプ別に特徴の理解も必要です。

  1. 運動失調型
  2. 痙直型
  3. アテトーゼ型
  4. 混合型

1.運動失調型

体のバランスが上手くとれず、動きの不安定さや筋力低下・筋肉のふるえが特徴です。また歩行時は、足の幅を広くとりながら歩く開脚歩行が見られます。

全体の5%未満に発症し、小脳やその伝導路の障害が原因です。

2.痙直型

痙直型は、脳性麻痺の70%以上に発症します。主な症状は関節を動かそうとする際に、抵抗が生じる状態です。筋肉が極度に緊張し硬くなり筋力低下が起こるため、動作がぎこちなくなる点やつま先歩き・はさみ足歩行が特徴ともいえます。

下記の表に、症状の特徴をまとめました。

※はさみ足歩行:足をクロスさせながら歩く状態

  影響が及ぶ箇所 特徴
痙性四肢麻痺 両腕と両脚に影響がでる
  • けいれん
  • 嚥下障害
  • 知的障害 など

※嚥下障害があると、むせやすい(ごえん)状態になります。ごえんを繰り返すことで、誤嚥性肺炎に陥る可能性があります。

痙性両麻痺 脚や下半身に影響がでる
  • 約1/4に知能が平均より低い
    傾向がある
  • 約1/3にけいれんがみられる など
痙性片麻痺 どちらか片側に影響がでる
  • 知能は正常
  • けいれんを起こすことはまれ
    など

痙直型の種類によって、注意する点が異なるため医師による診断が重要となります。とくに、痙性四肢麻痺では筋力低下による二次障害を防ぐことが必要です。

また痙直型であっても、軽症である場合はランニングなど特定の活動中に機能障害を発症するケースがあります。育児を行っていく中で、少しでも不安になる症状があれば具体的に記録し医師へ相談しましょう。

3.アテトーゼ型

脳性麻痺の20%に発症し、基底核障害が原因とされています。本人の意思に関係なく、体が動く不随意運動が起こり姿勢を維持することが難しい症状が特徴です。

症状の特徴である不随意運動は、感情に左右されやすく興奮すると活性化され、睡眠や発音にも影響します。

4.混合型

混合型とは、運動失調型・痙直型・アテトーゼ型を複数併せ持つタイプです。とくに、痙直型とアテトーゼ型の混合が多いとされています。

脳性麻痺7つの合併症状

ここからは、脳性麻痺の合併症について解説します。大切なお子さんに予期せぬ症状が出た際に、不安になるのは当然です。

合併症の症状を知ると、必要以上に不安を抱えずに済みます。大切なのは、必要以上に不安にならないことです。

  1. てんかん
  2. 視覚・聴覚障害
  3. 精神遅滞
  4. 摂食嚥下障害
  5. 睡眠障害
  6. 成長障害
  7. 思春期早発症

1.てんかん

てんかんは、脳にある神経細胞が異常を起こし反復性の発作を起こす神経障害の1種です。脳性麻痺の約40%が、けいれん発作を合併するといわれています。てんかん発作は、意識がなくなる症状だけではありません。

体の一部が突然動いたり、急に言葉が理解できなくなったりと症状はさまざまです。発作の兆候が見られた場合や、発作を疑うような症状が出現した場合は倒れて頭などをぶつけないように注意が必要です。

2.視覚・聴覚障害

脳性麻痺のある子どもの約1/3に、視覚障害があるとされます。視覚障害の症状は以下の通りです。

  • 眼振
  • 斜視
    →20%に合併が見られる
  • 屈折異常
    →眼球発育の遅れによる遠視が多いが、強近視、乱視を発症するケースも
  • 神経委縮
    →重症心身障害児に発症しやすい
  • ぶどう膜炎 など

また聴覚障害においては、感音性難聴を発症し中耳炎を合併することで混合性難聴へと移行する場合もあります。

人工内耳が開発されたことで、難聴に対する治療も進歩しました。しかし脳性麻痺のある子どもの場合、埋め込みをした後も訓練が必要です。

3.精神遅滞

精神遅滞は、知的障害とも言われます。身体の麻痺の範囲が広いと合併率は高くなるとされ、なかには自閉症スペクトラムや学習障害を合併するケースも。

しかし、両麻痺型やアテトーゼ型のように精神遅滞を合併しない場合もあります。

4.摂食嚥下障害

協調性運動障害が原因で、嚙む力や飲み込む力が弱いため誤嚥(ごえん)を起こします。症状の程度によっては、栄養状態不良や誤嚥性肺炎のため鼻や胃に管を通す経管栄養が必要となる場合があるのです。

5.睡眠障害

とくに、重症心身障害児に睡眠障害が頻発するといわれています。原因は、下記の通りです。

  • 睡眠と覚醒のリズムが不規則
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 内因性のリズム障害
  • てんかんなど健康問題が原因による生活リズムの乱れ

睡眠障害は、本人だけでなく介助する保護者にも負担が大きくなります。可能な限り、朝起きたら太陽の日差しを浴び、夜は暗くするなど1日のなかでのメリハリをつけるようにしましょう。

6.成長障害

体の成長や発達に、遅れが出る状態をいいます。脳性麻痺は、筋力の低下による摂食嚥下障害が要因となり、成長障害として以下の点があげられます。

  • 体重の増加や身長の伸びが遅い
    →筋力低下や栄養の摂取がうまくいかない
  • 筋肉発達不全
    →筋力低下や筋肉のこわばり
  • 骨の発育不全
    →筋肉の緊張や運動不足によるもの

筋力は、何もしないでおくと低下していく一方です。主治医と相談しながら、子供の成長や症状に合わせたリハビリが必要になります。

7.思春期早発症

通常より、2~3年程早く成長が始まる状態です。子どもが大人になるまでには、1次性徴と2次性徴の過程があります。

  • 1次性徴
    →卵巣や精巣が形成される(体内で起こる)
  • 2次性徴
    →卵巣、子宮、乳房など繁殖能力を獲得する状態(思春期)

脳性麻痺やさまざまな原因によって、脳(下垂体・間脳)及び生殖器の機能が成熟すると性ホルモンが増加し2次性徴が早期に出現します。思春期早発症の特徴を下記にまとめました。

性別 特徴
男性
  • 9歳より前:精巣の大きさが3~4㎜以上
  • 10歳より前:陰毛が生える
  • 11歳より前:声変わり、ひげが生える など
女性
  • 7歳6ヶ月より前:乳房がふくらむ
  • 8歳より前:陰毛が生える
  • 10歳6ヶ月より前:初潮がくる など

思春期早発症は、血液検査のホルモン値が診断基準となります。また必要時には超音波検査や頭部MRI等の検査をおこなうケースもあるため、本人の状態など詳しく医師へ伝えるとよいでしょう。

脳性麻痺の症状が分かる時期

脳性麻痺は、お母さんのお腹にいるときから生後1ヶ月で発症し2歳になる頃までに症状が現れます。重度の障害がある場合は出生後すぐに脳性麻痺を疑われますが、すぐに診断できる症例ばかりではありません。

子どもの発達には、個人差があります。とくに脳性麻痺の症状にみられる運動機能異常は、生後7~9ヶ月頃のハイハイやつかまり立ちをする時期でないと診断が難しいといわれています。脳性麻痺を疑う場合の症状は下記の通りです。

  • 首がすわらない
  • おすわりができない
  • ハイハイができない
  • 寝返りが中々できない など

神経質になる必要はありませんが、生後6ヶ月~1年程度または2歳までに気になる症状がある際は医師への相談をおすすめします。

脳性麻痺の治療法

医学が進歩している現在でも、脳性麻痺の根本的な治療法はありません。大切なのは、筋力低下を予防し二次障害を重症化させないことです。

ここでは、脳性麻痺に対する治療について解説します。

  • 理学療法・作業療法
  • 言語療法
  • 薬物療法
  • ボツリヌス毒素治療
  • バクロフェンの髄腔内投与

理学療法・作業療法

筋力低下を防ぐ目的で行われます。理学療法・作業療法で取り入れられるメニューは、下記の通りです

  • ストレッチング
  • 筋力強化
  • 適性運動パターンの促進
  • 電気刺激
  • マッサージ療法
  • 温熱療法 など

症状に応じて、装具をつける場合があります。

言語療法

口の周りの筋肉及び、呼吸筋の動きの低下を防ぐ目的で行います。言語療法と聞くと、言葉の訓練と感じる人も多いのではないでしょうか。

脳性麻痺の場合、呼吸や咀嚼嚥下がうまくできず命の危機にさらされるケースがあります。言語療法では、発声の訓練も行いつつ食品類の咀嚼嚥下機能低下を防ぎます。

薬物療法

筋肉が極度に緊張し硬くなるため、緊張を和らげる内服を処方します。薬剤治療は、副作用もあるため慎重に進める必要があります。

ボツリヌス毒素治療

ボツリヌス毒素を注射する治療法です。ボツリヌス毒素と聞くと、多くの人が危険なイメージがあるのではないでしょうか。

ボツリヌスの毒素は、緊張し硬くなった筋肉を和らげる効果があり拘縮予防になります。

バクロフェンの髄腔内投与

お腹の皮膚の下に、ポンプを埋め込み24時間を通して脊髄髄腔内にバクロフェンを継続的に投与します。

バクロフェンは、前述した内服薬やボツリヌス毒素注射の効果と同様に筋肉の緊張を和らげる目的で行われます。筋肉の緊張が和らぐことで、着替えなどがしやすくなるといわれています。

脳性麻痺に幹細胞治療が注目されている?

近年、注目されている幹細胞治療について解説します。幹細胞治療とは、再生医療の一種です。ヒト幹細胞を利用し、損傷した神経や臓器・血管などの修復を行います。とはいえ、現在も薬物療法や理学療法などで筋肉の低下を防ぐことがメインで行われています。

しかし医学の進歩とともに、幹細胞治療が脳性麻痺にも効果的であることが分かってきました。脳性麻痺は、さまざまな原因で脳が損傷したことで起こる障害です。脳の損傷部にある正常な動きのできない細胞に幹細胞を投与することで脳神経を再生させます。

幹細胞による作用は、脳に直接働きかける訳ではありません。脳への血流が低下したことで、正常に機能しない細胞に対し投与すると新しく血管を再生し脳機能を改善できる仕組みです。当院では、幹細胞治療を行っています。

入院の必要もないため、本人だけでなくご家族の負担も少なくすみます。また重度の脳性麻痺の方にも対応しているため、重症だからといってあきらめる必要はありません。幹細胞治療を受けたいとお考えの方は、当院へ相談してみませんか。

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脳性麻痺が治るのか?Q&A

最後に、下記の質問に答えていきます。

  • 脳性麻痺は治りますか?
  • 脳性麻痺は大人でもなるのでしょうか?
  • 脳性麻痺のある人の寿命は?

脳性麻痺は治りますか?

現時点で、根治治療はありません。筋力低下を防ぐ理学療法や作業療法、薬物療法などがメインになります。しかし、医学の進歩とともに幹細胞治療による効果も確認されています。本人の症状に合った治療を、受けるようにしましょう。脳性麻痺は大人でもなるのでしょうか?

脳性麻痺は、お母さんのお腹にいるときから生後1ヶ月の間に発症し2歳までには症状が出現すると定義付けられています。そのため、大人になってから脳性麻痺になる(発症)ケースは考えにくいでしょう。

(参照:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン

脳性麻痺のある人の寿命は?

脳性麻痺がある方の寿命は、通常の平均寿命と大きく変わりません。しかし、重症度によっては、平均寿命より短くなる場合があります。原因は、脳性麻痺そのものではなく合併症によるものによるとされています。

脳性麻痺は早期発見と治療が大切

本記事では、脳性麻痺は治るのかや脳性麻痺の種類と原因治療について解説してきました。脳性麻痺は、何らかの要因による脳機能障害が原因で起こる障害です。2歳ごろまでに症状が出現するといわれていますが、症状が軽度であれば分かりにくいケースもあります。

発見が遅れると、筋力低下が進み呼吸や咀嚼嚥下に影響が及びます。神経質になる必要はありませんが、2歳までの成長過程で平均よりもかなり遅いと感じることがある際は医師への相談がおすすめです。

早期に発見し治療を開始すると、筋力低下を防げます。また、近年では幹細胞治療も注目されています。 本人の症状に合わせた治療を医師と相談しながら慎重に進めていきましょう。

※本記事は、MSDマニュアル脳性麻痺症候群を参照しています。

 

 

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