自閉症のある4歳児が喋らないのはなぜ?言葉の発達や原因とかかわり方について徹底解説
「自閉症のある4歳児が喋らない」
「4歳の言葉の発達や関わり方を知りたい」
とお考えではないでしょうか。本記事にたどり着く前に、たくさんの情報を見聞きしている方も多いのではないでしょうか。
発達障害という言葉が広く知られ始めた近年では、インターネット社会の影響で、たくさんの情報で溢れています。
さらに情報に左右された結果、1人で悩みを抱え込み我が子の将来が不安になっている方もいます。そこで本記事では「自閉症のある4歳児が喋らない」にスポットを当て解説していきます。
関連記事:自閉症はいつわかる?自閉症の原因と症状・年齢別症状について解説
本記事について
※自閉症含む発達障害の症状・特徴は本記事に記載されている項目が全てではありません
※子どもの発達は個人差があります
※治療や診断については医師にご相談ください
発達障害とは
ここでは、発達障害について下記3つを紹介します。
- 原因
- 症状
- 治療
1.原因
発達障害は、脳機能の問題が生じている疾患です。
日常生活・学業・社会生活・職業上での発達期において機能障害がみられると定義づけられています。
一昔前までは、原因が解明されていませんでした。しかし医学の進歩とともに、近年では遺伝などさまざまな要因が複雑に関係していると言われています。
2.症状
発達障害は複数の種類に別れており、種類によって症状が異なるのも特徴です。
代表的な特徴は下記になります。
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発達障害の種類と症状の詳細は、後述「発達障害の種類」で解説しますので参考にしてみてください。
3.治療
発達障害に対する治療は、症状に対しての対症療法になります。治療と聞くと、治ると感じる方もいるのではないでしょうか。
あくまでも、症状をおさえることで日常生活で感じる困難を軽くするといった治療になります。
治療法は、主に下記の通りです。
- 行動療法
- 心理療法
- 言語療法
- 環境調整
- 薬物治療
- 再生医療
発達障害は、早期発見し支援へつなげることが重要であるとされています。治療に関しては、医師と相談のうえで子どもさんの障害と症状に合わせて進めていきます。
親や支援者視点ではなく、日常生活における本人の困りごとを把握しておくことが大切です。また近年では、再生医療が注目されています。
幹細胞治療を用いた再生医療で、自閉症治療の研究が行われているのも事実です。2021年には金沢大学と九州大学の研究グループが、自閉症に対する新たな治療戦略として幹細胞治療の研究結果を公表しています。幹細胞治療が当たり前になる日も、近いかもしれません。
参照:「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取り組み事例に関する調査研究報告書」
発達障害の種類
発達障害は、いくつもの種類に別れています。多くの方は、自閉症や注意欠陥多動性障害を思い浮かべるのではないでしょうか。
下記の表に、発達障害の種類と特徴の1例をまとめました。
発達障害の種類 | 特徴 |
自閉症 |
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注意欠陥多動性障害 |
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学習障害 (知的障害ではありません) |
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トゥレット症候群 |
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運動チック |
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音声チック |
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吃音症 |
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発達障害の中でも、1つの発達障害のみや数種類の発達障害を併せ持つ方もいます。またなかには、知的障害が併発しているケースがあるため安易な判断はできません。
医師の診断のもと、子どもにあった支援と治療が必要になります。
4歳児・自閉症の特徴
ここまでは、発達障害の原因や種類について解説してきました。子どもさんに当てはまる症状があると不安になっている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、あくまで自閉症を含む発達障害の1例をあげています。そのため、症状や特徴が当てはまるからといって必ずしも発達障害とは限りません。
とくに、子どもの発達には個人差があるため長い目で発達を見守ることも必要です。決して、神経質にならないようにしましょう。
ここからは、4歳で自閉症のある子どもにみられる5つ特徴を解説します。あくまでも、参考程度を前提として読み進めてください。
1.一人で遊ぶことが多い
1つ目の特徴は、1人で遊ぶことが多い点です。4歳になると、幼稚園・保育園でお友達との関係が芽生え子ども同士の関係も変化してきます。
自閉症のある子どもが、1人で遊ぶ姿が多い要因は下記のとおりです。
- 他人への興味が少ない
- 独自のルールがある
- 遊びに対するこだわりがある
- 遊びのルールを理解できない
とはいえ、定型発達の子どもでも4歳といえば大人から促されて人に玩具を貸すことができるようになる年齢です。
無理にお友達同士で遊ばせるのではなく、どのような遊びに興味があるのかなどを観察し得意分野を見つけてあげるようにしましょう。
2.初めての環境に敏感
2つ目の特徴は、初めての環境に敏感な点です。自閉症のある子どもの、代表的な特徴といえるでしょう。
初めての環境に敏感であるのは、自閉症があるからではなく大人も同じです。しかし、自閉症のある子どもが環境に敏感であるのは感覚が過敏であるからとも考えられています。
初めて聞く音や匂いなど、様々な要因が重なり初めての環境に敏感になってしまうのです。なかには、遠足が楽しみではないがゆえ不安になりパニックを起こすこともあります。
初めての環境に敏感な子どもには、前もってスケジュールや写真などで事前に状況を伝えておくのもよいでしょう。また初めての環境に入る前から徐々に伝えたり、似たような環境で慣らしておくのも1つの方法です。
3.急なスケジュールの変更が苦手
3つ目の特徴は、急なスケジュール変更が苦手な点です。急な予定変更を受け入れられない要因は、下記の通りです。
- 強い不安を感じる
- 見通しが立たないことへの不安
- 不安な気持ちを伝えることが難しい
- 変更時の対処法が分からない
1度インプットされた予定が崩れ、最初から立て直すことが難しいため本人の頭のなかはパニックになってしまいます。
とはいえ、日常生活の中で急な予定変更を避けられないことがあるのは当然です。本人が苦痛を感じず、予定変更を受け入れられるようにする支援が必要になります。
急な予定変更があった際は、前述したように見通しを立ててあげることが大切です。一方的な支援ではなく、本人の不安な気持ちに寄り添いながら行うとよいでしょう。
4.一定の物事にこだわりがある
4つ目の特徴は、ある一定の物事にこだわりがある点です。子どもにより、物事に対するこだわりは様々です。下記にこだわりの1例をまとめました。
食事 |
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道 |
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衣類 |
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時間 |
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4歳児に時間が分かるの?と思う方もいるのではないでしょうか。正確な時間ではなく、決まった時間に放送されるテレビ番組などで時間を感覚的に捉えている子どももいます。
そのため、春や秋などテレビ番組の放送時間が変わったことが原因で癇癪を起こすケースも。こだわりは、成長と共にに変化し症状が軽くなる場合もあります。
無理にこだわりから切り離す必要はありません。ただし、こだわりが原因で日常生活が送れないなど支障がある際は医師に相談することをおすすめします。
5.刺激に対する感覚過敏がある
5つ目の特徴は、刺激などに対する感覚過敏がある点です。私たちが普段何ともないような音や匂いに対して過敏に反応し、パニックを起こす場合があります。
下記の表に、感覚過敏の種類と特徴についてまとめました。
感覚過敏の種類 | 特徴 |
聴覚過敏 |
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視覚過敏 |
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触覚過敏 |
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嗅覚過敏 |
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味覚過敏 |
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固有感覚 |
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前庭感覚 |
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感覚過敏に対しては様々な考え方があり「慣らす」といった方法を選択する支援者や保護者がいます。ただ感覚過敏の辛さは、本人にしか分かりません。
大切なのは、辛い状況をつくらないことや避けること。例えば、聴覚過敏がある子どもにはイヤーマフの使用や静かな環境を整えるなど1人1人にあった支援を行いましょう。
参照元:(eヘルスネット「発達障害」)
4歳言葉の発達
ここでは、4歳児定型発達の言葉について解説します。
言葉の発達も個人差があります。あくまでも基準ということを認識しておきましょう。
日常会話ができる
4歳になると、日常会話ができるようになります。語彙数は1500語〜2000語。
たまに、接続詞も使いながらの会話も可能です。
また「〜だから」などといった根拠をもとに話す様子も見られます。4歳児では、これまで発音がしにくかった「か行」「た行」もハッキリ発音ができるようになり簡単な物語も語れるようになります。
数字が数えられる
数字が数えられるようになるのも、大きな特徴です。
数字に興味を持ち始める年齢になり、1~10まで数えられるようになります。
未来や過去について会話ができる
4歳では、日常会話に加え未来や過去についての会話が可能です。
今日だけの出来ごとだけでなく、明日や昨日のことについても話せるようになります。
自閉症がある4歳の子どもが喋らない原因
ここからは、自閉症のある4歳の子どもが喋らない原因3つを解説します。
自閉症があるから喋らないと漠然と捉えるのではなく、原因を知っておくと子どもに寄り添いながら支援をしやすくなります。
- 他人への興味が薄い
- 注意欠陥多動性障害などで学習が難しい
- 精神遅滞(知的障害)を伴っている
1.他人への興味が薄い
1つ目の原因は、他人への興味が薄いことです。定型の子どもは、言葉を習得していく過程で自分以外の人の言葉を真似しながら覚えていきます。
しかし、自閉症があると他人への興味が薄いため他人の真似をする場面が限りなく少ないといえます。気が散りやすい点も特徴であるため、言葉を習得しにくい状況にあるということです。
2.注意欠陥多動性障害などで学習が難しい
2つ目の原因は、注意欠陥多動性障害などで言葉の学習が難しいことです。自閉症のある子どもの中には、注意欠陥多動性障害を併せ持つケースがあります。
注意欠陥多動性障害があると、無意識に体が動いたり椅子に座っていられないため言葉を習得する機会を逃してしまうのです。
3.精神遅滞(知的障害)を伴っている
3つ目の原因は、精神遅滞を伴っていることです。前述したように、自閉症のある子どもの中には他の発達障害や精神遅滞を併せ持つ場合があります。
精神発達遅滞は、実年齢よりも発達年齢が幼くゆっくりであるため言葉の習得にも時間を要します。例えば、4歳児でも精神遅滞があり2歳の知能であれば2歳児で習得する言葉の範囲で留まっています。
4歳の子どもが喋らない時の関わり方
4歳になる子どもさんの、お父様お母様の中には関わり方について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。ここからは、喋らない時の関わり方について解説します。
「自閉症がある4歳の子どもが喋らない原因」で解説したように、自閉症のある子どもが喋らなのには、いくつかの原因があります。
喋らない子どもに沢山喋りかけると良いわけではありません。まずは、原因を明確にすることから行いましょう。そのうえで、以下のような関わり方をおすすめします。
- 理解できている言葉を話す
- 短い言葉で簡単な文章で伝える
- 興味を持ち発した言葉に対し話しかける
→【例】子ども「わんわん」あなた「大きいワンワンだね」 - 絵カードや写真などを見せながら行動の見通しを立てる
関わり方のポイントは、喋るようにするだけではありません。自閉症のある子どもの中には、言葉を発することが難しい症状があります。
症状にあわせ、言葉が出にくいのであれば絵カードでコミュニケーションを取る方法を教えるのも必要です。本人が負担に感じてしまうと、せっかくの習得の機会が閉ざされてしまいます。
言葉を喋る・喋らないは別として、本人が自分自身の意思を伝えやすい環境と方法を選ぶことをおすすめします。主役は、支援者や保護者ではなく本人であるということを忘れずにしましょう。
関連記事:幹細胞治療により、自閉症スペクトラムの症状が改善した医学研究
自閉症のある4歳児が喋らないことに対するQ&A
最後に質問に答えていきます。
自閉症のある人が話せない原因を知りたい
自閉症のある人が話せない原因は、下記の通りです。
- 他人への興味が薄い
- 注意欠陥多動性障害などで学習が難しい
- 精神遅滞(知的障害)を伴っている
上記以外にも、感覚過敏や強いストレスなどが原因といわれています。
4歳で言葉が出ないのは知的障害ですか?
4歳で言葉が出ないからという理由で、知的障害とは限りません。本記事で紹介したように、自閉症などの可能性も否定できません。
また子どもの発達には個人差があるため、あるときを境に言葉が増えたケースもあります。不安な場合は、医師への相談をおすすめします。
4歳で言葉の遅れは追いつきますか?
4歳で言葉の遅れが追いつくかという点において、さまざまな説があるようです。ここでお伝えできるのは、必ずしも4歳で言葉の遅れが追いつくとは限らないということ。
大切なのは、子どもの発達に合わせた関わりと支援です。4歳までに言葉を追いつかせたいという気持ちは分かりますが、まずは子どもの発達状況を知ることが最初の1歩です。
焦らず、長い目で様子を見ていきましょう。
重度知的障害のある人が話せないのはなぜですか?
重度知的障害の方が、全く話せないとは限りません。重度知的障害とは、IQ20〜35となり発達年齢は3〜6歳のため発達年齢相応の言葉を話せると考えてよいでしょう。
また最重度になるとIQ20未満となり、発達年齢は3歳未満とされています。そのため、最重度知的障害のある方は声は出せるけれど話すことが難しいのです。
【知的障害とは】 「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義づけられています。 また、精神遅滞ともいわれています。 出典:厚生労働省ホームページ(調査の結果|厚生労働省 (mhlw.go.jp)) |
言葉の遅れは取り戻せますか?
自閉症などが原因による言葉の遅れは、早期発見と早期療育などの支援に繋げることで改善するケースがあります。
また言葉が話せないからという理由で、一概に障害があるとは言えません。まずは医師へ相談し、異常が見られなければ本の読み聞かせや沢山話しかけるようなかかわり方をしましょう。
自閉症や知的障害が原因で言葉の遅れがある場合は、必要に応じて言語療法など専門的な指導を受けると言葉の促進に繋がります。
まとめ
本記事では、自閉症のある4歳児が喋らない原因などについて解説してきました。
子育てをするうえで、わが子の発達が気になるのは当然です。しかし、本記事で何度も触れているように子どもの発達には個人差があります。
発達障害症状の項目に当てはまる場合や、喋らないからといって障害があるとは限りません。大切なのは、目の前にいる子どもさんの発達状況を知ることです。
まずは、子どもの気になる様子を医師へ相談してみるとよいでしょう。