アンチエイジング (若返り)
アンチエイジング(若返り)の治療目的で幹細胞治療を検討されている方へ
目次
幹細胞とアンチエイジング(若返り)
幹細胞は、増殖と分化の可能性を持つ細胞の一種です。私たちが生まれてからの幹細胞が分化増殖して、個々の組織や臓器に発達していきます。すなわち幹細胞は、「わたしたちの体の起源」であるわけです。
また、組織や臓器の再生・修復における幹細胞の役割は、幹細胞の増殖・分化能力だけでなく、幹細胞が持つ分泌機能により、様々な成長因子やサイトカインを分泌して組織の微小環境を調整、維持することにあります。
老化は生命現象の一段階であり、すべての生き物はこの自然のルールに従いますが、体の臓器によって、老化の始まりの時期が異なります。また、老化は構造的な変化や機能の低下にも反映されます。
中でも、再生・修復能力の低下は、老化の主な特徴です。加齢に伴い、ヒトの組織に存在する幹細胞の老化が、組織の再生能力を低下させる大きな原因となっています。したがって、先進の幹細胞技術を応用することで、高齢者の再生・修復能力を向上させることができます。それにより、老化の進行を遅らせたり、老化した病気を治療したりすることができるのです。
加齢に伴って起きる変化
高齢になるにつれて、更年期障害になったり骨粗鬆症になったりし、それを改善する必要があります。以下は、加齢に伴う身体機能の変化です。
幹細胞治療で期待される一般的な改善点
間葉系幹細胞は、その治療の可能性に大きく関連しています。
全ての間葉系幹細胞は安全性と有効性を共有していますが、間葉系幹細胞の治療効果を高めるためには、間葉系幹細胞の由来を重要な因子として考慮した標的治療が不可欠です。研究により、骨髄由来間葉系幹細胞 が脳や脊髄損傷の治療に、脂肪組織由来間葉系幹細胞が生殖器疾患や皮膚再生の治療に、臍帯由来間葉系幹細胞が肺疾患や急性呼吸困難症候群 (ARDS) の治療の代替になる可能性があることを示しています。
すなわち、ただ単純に画一的に1種類の幹細胞治療を提供するだけではなく、個々人の状態、病気の状態に対して、オーダーメイドで複数種類の幹細胞治療を提供できる施設で治療を受けることが非常に大事です。それができるのが当院ということになります。
研究では、大腿骨、肝臓、心臓の疾患モデルにおいて、様々な応用技術を用いた3Dモデル (スフェロイド) の再生特性を実証しています。
幹細胞治療の効果
また、アンチエイジング(若返り)においての幹細胞治療では以下の効果が期待されます。
- 免疫力の向上
- 加齢に伴う疾病の予防
- 記憶力、集中力、注意力の向上
- 慢性疲労の減少
- 内臓の正常化・若返り
- ホルモンレベルの管理
- 睡眠の質の向上
- 肺機能の向上
- 心機能の向上
- 筋力の向上
- 女性の更年期障害の改善
- 男性の更年期障害の改善
- 性機能の亢進
- 変形性膝関節症の改善
- 貧血、疲れやすさの改善
- 腎機能の向上
免疫力の向上
免疫系は老化のプロセスにおいて重要な役割を担っています。
免疫系と老化の間には、免疫老化と炎症老化という2つのカテゴリーがあります。
免疫老化とは、加齢に伴い免疫系の能力が低下することを指します。
老化した白血球は、免疫細胞機能の低下をもたらします。特に、高齢者のB細胞は、病原体に対する応答能力が低下します。
これらの免疫老化に伴う炎症性変化が「炎症性老化」を引き起こす可能性があります。加齢に伴い免疫システムが変化し、自然免疫と適応免疫のバランスを崩し、続的に軽度の全身性炎症が引き起こされます。
幹細胞療法は、免疫細胞の再生を促進することで、免疫系を強化することができます。
例えば、間葉系幹細胞は、免疫細胞の活動を制御し、損傷した組織の再生を促進することにより、免疫機能を改善することが示されています。
加齢に伴う疾病の予防
幹細胞療法は、加齢に伴う病気の予防や進行を遅らせる可能性があります。
細胞は、複製、成長、死といったサイクルを繰り返して、身体の臓器や組織を修復し、生物全体を最適な状態に保つことができます。しかし、加齢に伴いこれらの細胞も有害な変化を受けるため、老化することでアルツハイマー病、パーキンソン病、がん、心血管疾患、肺疾患、糖尿病、神経疾患などの多くの病気を発症するリスクが高まります。
これらの発症に免疫老化や炎症老化が大きく関連していることが示唆されています。免疫力が低下する結果、高齢者層は市中肺炎などの重症感染症にかかりやすくなり、ワクチンも効きにくくなります。
幹細胞治療は、死にかけた細胞を補充して正常な組織機能を維持し、損傷した組織を再生することができます。そのため、成体幹細胞は臓器や組織の老化を防ぐために重要な役割を果たし、老化を遅らせることができます。
例えば、神経幹細胞は、アルツハイマー病において、脳細胞の再生を促進し、認知機能を改善することが示されています。
同様に、間葉系幹細胞は心臓病患者の心機能を改善することが示されています。
記憶力、集中力、注意力の向上
幹細胞療法は、記憶や認知機能を改善する可能性があります。
加齢に伴い、私たちの脳細胞は損傷を受けたり、死んでしまったりして、記憶力の低下や認知機能の低下を招きます。
幹細胞は、脳細胞に分化し、損傷した細胞の再生を促進する能力を持っています。
例えば、神経幹細胞は、アルツハイマー病の動物モデルにおいて、記憶と認知機能を改善することが示されています。
自然老化したラットの実験では、幹細胞移植により認知機能と身体機能が改善されました。
慢性疲労の解消
慢性疲労は、特に年齢を重ねるにつれて、多くの人に影響を与える一般的な問題です。
加齢に伴う筋肉の病態生理学的変化を示します。
幹細胞療法は、組織の修復を促進し、全体的な健康を改善することによって、慢性疲労を軽減する有望な結果を示しています。
例えば、高齢に伴い筋肉の量が減少している(サルコペニア)動物モデルにおいて、間葉系幹細胞は骨格筋重量と筋線維断面積を増加させることにより、筋肉量の減少を抑制し、筋力や持久力などの身体能力が有意に向上したことが示されています。
また、間葉系幹細胞は筋肉の細胞死 (アポトーシス)を抑制し、慢性炎症性サイトカインの発現を抑制することから、間葉系幹細胞の移植による骨格筋の筋力や機能の向上が期待されます。さらに、間葉系幹細胞は常在の骨格筋幹細胞を活性化する能力を持っており、筋組織の形成と分化をもたらすと考えられています。
内臓の正常化・若返り
幹細胞は、たんぱく質や成長因子など、組織再生に寄与する多くの活性因子を産生します。
幹細胞は自己再生能力を持ち、あらゆる細胞種に分化することができ、生理的な再生に関与しています。幹細胞の分化と新しい特定細胞の生成を通じて、骨修復、皮膚創傷、歯髄炎、虚血性心組織など、生体内の傷ついた器官を再生・修復できることが、さまざまな調査によって報告されています。
さらに、幹細胞は、免疫制御、血管新生などの特徴を持つ多くの分子因子(サイトカイン)を放出し、再生を刺激することが、いくつかの研究によって実証されています。
幹細胞の内臓の再生において、以下の効果を期待できます。
- 神経再生
骨髄間質細胞は、神経疾患を安全かつ効率的に治療し、疾患の発生を抑制し、患者さんのQOLや臨床症状を大幅に改善できる可能性があります。脊髄損傷の実験的モデルにおいて、幹細胞を移植することで、脊髄損傷後に失われた神経細胞の代替として使用することができ、神経保護効果や軸索再生促進効果ももたらすことが実証されました。 - 肝臓の再生
幹細胞療法は、肝疾患患者の肝機能を改善することが示されており、炎症の軽減や肝酵素の改善が研究により実証されています。間葉系幹細胞により、臨床症状を有意義に改善し、肝線維化を抑制し、病気の発生を抑制することができる可能性もあります。 - 腎臓の再生
幹細胞治療は慢性腎臓病患者の腎臓機能を改善することが示されており、蛋白尿の減少や糸球体濾過量の改善が実証されています。また、研究において、腎臓の平均血流量はかなり増加し、低酸素、腎静脈の炎症性サイトカイン、血管新生因子はかなり減弱しました。 - 心臓の再生
加齢に伴い、心臓は構造的な変化を受け、機能低下や心臓病のリスク上昇につながります。幹細胞治療は、心臓の機能を改善し、新しい心臓細胞の生産を増加させることが示されており、老化が心臓に及ぼす悪影響を改善させる可能性があります。 - 骨再生
幹細胞療法は、加齢に伴い低下する骨の構造と機能の正常化にも効果が期待されています。骨粗鬆症は、骨密度の低下と骨折リスクの上昇を特徴とする、加齢に伴う一般的な疾患です。幹細胞は、骨形成細胞に分化し、新しい骨組織の産生を促すことで、骨再生を促進し、骨密度を増加させることが示されています。さらに、幹細胞は免疫反応を調節し、骨量減少の一因となる炎症を抑えることもできます。今後さらに研究が進めば、幹細胞療法は加齢に伴う骨量減少の予防と治療における貴重なツールになる可能性があります。 - 傷の再生
幹細胞は、組織の再生を促進し、炎症を抑えることで創傷治癒を促進することが示されています。これは、加齢に伴う変化で傷の治りが悪くなっている高齢者にとって、特に有益であると考えられます。また、脂肪由来幹細胞は、糖尿病マウスの足背部全層創傷に対して有益な効果を示し、潰瘍面積がかなり減少することが研究で認められました。また、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞の子宮内注入により、子宮内膜厚、帝王切開瘢痕憩室、子宮体積が改善されることがわかりました。
ホルモンレベルの管理
加齢に伴い、体内のホルモンバランスが変化し、エネルギーの低下、筋肉量の減少、体重増加など、さまざまな症状が現れます。
しかし、最近の研究で、幹細胞療法がこうした加齢に伴うホルモンの変化に対応できる可能性があることが明らかになりました。幹細胞療法は、損傷したり失われたホルモン産生細胞を補い、正常なホルモンレベルを回復させることができる可能性があります。
ある研究では、加齢に伴う胸腺の機能低下(免疫細胞を作り出す胸腺の機能低下)の治療に幹細胞療法を利用し、その結果、幹細胞療法は胸腺の機能を改善し、免疫細胞の生産を増加させることができ、免疫機能の向上と健康全般の改善につながることがわかりました。
また、加齢とともに減少する性ホルモン(テストステロンとエストラジオール)の濃度を改善できる可能性があります。
脂肪由来幹細胞をマウスの卵巣に注入したところ、発育中の卵子を含む構造物である卵胞の数が増加しました。加齢に伴う卵巣機能の低下を経験した女性において、幹細胞療法が生殖能力やホルモンバランスを改善できる可能性を示唆しています。また、男性においての性腺機能低下でも幹細胞療法でテストステロンの濃度をあげることで改善が期待されます。
睡眠の質の向上
加齢は、睡眠タイミング、睡眠時間、睡眠の質の変化など、数多くの変化と関連しています。老化するにつれて、睡眠時間が早まり、睡眠中に中途覚醒する回数が増加し、深い睡眠であるノンレム睡眠が減少します。高齢者の1/3が週に数回以上、早朝覚醒や睡眠維持の困難を訴えています。小さいながらも睡眠に質に大きく影響するのは、レム睡眠とノンレム睡眠です。
また、睡眠のサイクルを決定するのは概日リズムという24時間周期のことで、これは光の刺激によって影響されます。つまり、夕方と早朝に光を浴びるとリズムのタイミングが遅くなります。
a.矢印は概日リズムのピークを表します。 b.明暗刺激による位相のずれを表しています。
概日リズムは年齢とともに早まると言われています。
a. 時計の時間と比較すると、深部体温と血漿メラトニンの位相はいずれも、若年者 (破線) よりも高齢者 (実線) の方が早いです。
b.ただし、通常の睡眠と覚醒、および暗所のタイミングと比較すると、中核体温と血漿メラトニンの両方の位相は、睡眠/暗さに関して、高齢者 (実線) では若年者(破線)よりも遅くなります 。
ここで、骨髄幹細胞は、概日リズムの長さの調節に関与してると言われています。
そのため、幹細胞療法によって睡眠の質の向上につながると考えられています。というのも、幹細胞の中には睡眠の概日リズムに関係するメラトニンの受容体が存在する、つまり幹細胞の投与によってメラトニンの数が増えることで、若い頃の概日リズムを取り戻すことが可能となるのです。
肺機能の向上
肺機能は、10年老化するごとにに低下すると言われています。COPDなど肺疾患に罹患する人も高齢になるにつれて増加します。理由として、老化に伴い、肺の弾力性が失われ、肺のポンプ機能を担う呼吸筋が弱くなり、肺のガス交換が減少するからです。
上図は肺疾患に罹患していない13人の研究被験者に対する一秒間の努力呼吸(FEV1)の速度です。円のサイズは個々の研究サンプルのサイズに対応します。追跡調査の年数が経つにつれて、老化が進行し、数値が低下していることが分かります。つまり、老化によって肺機能が低下していることが分かります。
ここで、これら老化した肺の欠損した気管支の細胞を、幹細胞の投与により、正常な細胞と置き換える事によって肺機能を向上させることが分かっています。
上図によると、ARDSのマウスに幹細胞を静脈注射すると、幹細胞は損傷した肺に生着し、上皮細胞の増殖を促進し、損傷した細胞の複製を促します。また、炎症反応を抑制するため、肺疾患での炎症を抑えることが可能となります。
つまり、幹細胞の投与は肺機能をも向上させるのです。
心機能の向上
幹細胞は心機能の向上への効果がもたらされると言われています。幹細胞による心機能の向上により、急性心筋梗塞、進行した冠状動脈疾患、および慢性心不全の患者の心筋灌流および/または収縮性能を高める可能性があります。以下の図は、幹細胞が心機能を向上させるメカニズムです。
幹細胞は、様々な細胞になることが出来るため、心臓の疾患により失われた細胞に置き換わり、正常な細胞となることで、心機能を正常に回復させることが出来ると言われています。心筋梗塞においても、梗塞した部位の壊死した心筋細胞を復元し、失われた血管も再生する能力を幹細胞は持っています。
筋力の向上
加齢により一般的に筋力が低下します。また、その代表的な病気として、サルコペニアがあります。サルコペニアとは、加齢により筋肉量が減少し、筋力が低下したことを指します。サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に影響が生じ、骨折、転倒、死亡のリスクを高めます。65歳以上の高齢者の15%程度がサルコペニアに該当します。
老化により、筋幹細胞の数が減少し、筋肉組織の再生能力が低下します。これにより、筋肉の再生がされなくなり、最終的にサルコペニアに陥ります。そこで、サルコペニアなど重篤な筋力の低下への治療に有用なのは、幹細胞治療です。以下は、筋肉から取り出した幹細胞を弱った筋肉に投与する事で、筋力を高めることを表しています。
女性の更年期障害の改善
更年期とは、閉経(卵巣の活動性が次第に消失し、ついに月経が永久に停止した状態で、日本人の平均閉経年齢は約50歳)前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間をいいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。
更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことです。
更年期障害の症状は大きく3種類に分けられます。
①血管の拡張と放熱に関係する症状:ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など
②その他のさまざまな身体症状:めまい、動悸、胸が締め付けられるような感じ、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさなど
③精神症状:気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など
ここで、幹細胞はこのような女性の更年期障害に対して大きな改善効果をもたらすことが分かっています。以下は、36歳の早期閉経の方で、低用量ピルに連続服用による服用中止後の4 年間続く続発性無月経(更年期障害の一種)の患者に幹細胞を投与した結果です。
上図は、右卵巣に幹細胞を投与した結果です。濃い色を右卵巣、薄い色を左卵巣としています。投与後、右卵巣は大きさが著しく増加しました。
上図は幹細胞移植後の血清エストロゲンレベルを示します。幹細胞移植後から、エストロゲンレベルは上昇し、移植後6か月過ぎに月経が再開しました。エストロゲンの上昇は、更年期障害の改善に繋がります。また、更年期障害では上昇するFSHやLHといった女性ホルモンも減少する事が示されました。
以上の結果から、更年期障害に対して幹細胞投与は有効であることが分かります。
男性の更年期障害の改善
女性特有と思われがちな更年期の症状は男性にもあり、"性ホルモン"の低下やバランスの乱れが原因とされています。男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。ホルモンの減少の速さや度合い、時期は個人差が大きく、したがって女性と似た更年期症状が男性では、40歳代以降どの年代でも起こる可能性があります。
男性と女性の更年期症状には違いがあり、男性ホルモンの減少によるものを、加齢性腺機能低下症、またはLOH症候群と呼んでいます。
男性ホルモンの減少により、以下のような身体、精神、性機能の症状が現れます。
このような男性の更年期障害に対しても、幹細胞治療が効果的と言われています。
男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる症状のことでLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。LOH症候群は、テストステロンの部分的な欠乏が原因で、高齢男性の生活の質を低下させます。
近年、テストステロンを主に分泌する精巣のライディッヒ細胞を、幹細胞から新しく作り出し代わりとなるライディッヒ様細胞を移植する事で、従来のテストステロン補充療法に代わる有望な代替療法となることが期待されています。
移植されたライディッヒ細胞が生着すると、その有効性は生涯にわたって続く可能性があり、少なくともテストステロン製品の 1 回の注射の有効期間である数週間よりもはるかに長く続く可能性があります。
ライディッヒ様細胞によるテストステロンの分泌量の経過です。幹細胞から誘導されたライディッヒ様細胞は少なくとも4週間テストステロンを分泌できることが分かります。
以上の結果より、幹細胞治療は男性の更年期障害を改善する可能性があることが分かります。
性機能の亢進
男性の性腺の中心である睾丸は、精子産生と男性ホルモン分泌の機能を持ちますが、睾丸の大部分を占めるのは精子産生を行う精細管です。したがって、睾丸容積は精細管の機能を反映します。睾丸の大きさは、10~19歳頃に急速に成長し、20歳頃にピークに達し、60歳以降は左右の大きさが不同となり縮んでいきます。
表1は、55歳以上の男性の性機能障害の割合です。平均して、55歳で16%、60歳で32%、65歳で33%の方が、正常に性機能が働かないことを示しています。
表2は実際の行為における満足度合です。65~69歳では73%の方が満足しているのに対し、75~92歳では性機能障害は43%と約半数近く、満足と回答した人も48%と半数以下の結果となりました。高齢になるに伴い、性機能が低下し満足度も下がっていく事が分かります。
ここで、幹細胞は高齢化による性機能障害の改善に有効であることが分かっています。骨髄または脂肪組織由来の間葉系幹細胞は、成長因子、ケモカイン、サイトカインを放出することで組織の再生を促進します。幹細胞は、自己再生能力、多くの細胞になることの出来る分化能力、損傷した組織の機能を再生する能力を備えており、勃起機能の回復に役立ちます。
以下は、勃起機能を幹細胞治療により回復した動画です。
以下は動画の和訳となります。
新しい臨床試験の結果によると、幹細胞が以前は不可能であった男性の勃起機能を回復できると言われています。れでは、主任研究者の博士に話を伺いましょう。
デンマークのオーデンセ大学病院のマルタ・ハさん、そしてe au 科学委員会のイン・シンプソン教授、お二人ともこんにちは。マルタさん、あなたの研究について教えてください、何をしたのですか?
勃起不全の男性が 21 人に対し、幹細胞は勃起不全の治療法として使用できる可能性がある かどうかを調べました。これはヒトの幹細胞を使った初めての研究でした。私たちの研究は実現可能であり、この幹細胞治療は安全であり、効果的であることがわかりました。
それは効果的なのですね。
はい、しかしこれは対照群を持たない一対一の研究なので、無作為化盲検対照群を使って大規模な研究を行う必要があります。
幹細胞を採取して注入する過程はどれほど簡単かそれとも難しいのですか?
私たちは幹細胞研究所を持っていないので、幹細胞を再び注入する前に、脂肪採取と幹細胞の処理を 2 時間以内に行う必要があります。幹細胞は非常に簡単に採取でき、簡単に分離でき、簡単に再注入できます。
勃起の問題はどれほど広範囲に広がっているのですか?つまり、どのくらい大きな問題を解決しているのですか?
これが解決策になるのであれば、症状だけを治療するのではなく、勃起不全を再生する何かを見つけることができれば素晴らしいでしょう。多くの男性はとても喜ぶと思います。
あなたの言うことは絶対に正しいと思います。では、サンプソン教授、この研究に対するあなたの反応はどうですか?
まず第一に、この第 1 相研究の成功おめでとうございます。私は非常に感銘を受けています、なぜなら、研究室の結果が臨床の世界に移されるのを見るのはこれが本当に初めてであり、他のすべてを否定するわけではないからです。研究室での研究結果ですが、私たちは動物の実験室研究を行っているときの成功率を知っていますが、人間の世界の臨床世界に入るのは非常に難しい場合があるので、非常に感銘を受けていますし、これが第1相研究であることも承知していますが、そこから始めなければなりません。そしてあなたはここで自分自身のセーフティネットを本当によく示してくれました。そして私の見解では、それほど複雑ではありません、あなたは事実自体を収集するだけで済みます、それは2時間以内です。私は本当に本当に楽しみにしていますし、将来にとても興奮しています。マーサが対照研究に真剣に取り組んでいることを知っています。それが私たちが今待っていることであり、本当にこれを望んでいます。
被験者が21人しかいないと言われているため、少し慎重になる必要があると思いますか?これがもし答えならダイナマイトになる可能性があるので、楽観的になる必要があると思いますか?
私たちは楽観的であるべきだと信じていますが、常に証拠について考えるべきです。マーサが言ったように、これは対照研究ではありませんが、結果を調べてみると、それは非常に肯定的であり、社会実験からの結果であると思います。そのため、私たちは非常に楽観的になるべきだと信じていますが、あなたが言ったように対照研究が始まるまで待たなければならないのです。
では次のステップはなにが問題となりますか?
私たちは、78人の男性によるより大規模な研究を計画しており、そのうちの半分は幹細胞を移植します。半年後に患者の盲検化が解除され、彼らが幹細胞を取得できたかどうかを確認します。大きな違いは、私たちが望んでいる違いであるということです。とにかく私たちが見つけなければなりません。何年も細胞を待ち続けてきたので、それが機能しているかどうか、そして機能しているかどうかを知る必要があります。これは機能していません、まだ結果です。
あなたは否定的ですが、結果は結果です。
わかりました、二人ともありがとうございました。
変形性膝関節症の改善
変形性膝関節症とは、男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。
初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
当院では、骨髄幹細胞と造血幹細胞を使った変形性膝関節症の治療を行っています。
幹細胞による治療は、自身の骨髄から骨髄幹細胞や造血幹細胞を採取し、膝に局所投与する方法です。幹細胞の採取は入院する事もなく、当日行うことが可能です。
貧血、疲れやすさの改善
高齢者の場合にも鉄不足による貧血は起こります。しかし若年者に比べると、体の状態が悪いことによって、鉄は十分にあるのにうまく利用できない貧血(悪性腫瘍や感染症、膠原病など)や赤血球を産生する骨髄の病気による貧血が起きる可能性が高いという特徴があります。
貧血の症状というとめまいが起きると考えている人も多いですが、貧血でめまいが起きる時は短時間で急激に出血している場合だけです。一般的には、貧血の症状は動悸や息切れ、疲れやすい、倦怠感などです。
高齢者の場合には、日常の生活動作がゆっくりであることも多く、貧血の症状に気づかない可能性があります。また、認知症のような物忘れや狭心症に伴うような胸の痛み、食欲がわかないなどという症状が出ることもあります。
遺伝性貧血には、鎌状赤血球症 (SCD)、ファンコニ貧血、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症 (G6PDD)、サラセミアなどのさまざまな症状があります。これらの障害に対する利用可能な管理戦略は依然として不十分であり、主な原因を排除することはできません。遺伝的異常はあらゆる形態の遺伝性貧血の主な原因であるため、最適なアプローチには欠陥遺伝子の修復が含まれます。このような遺伝性貧血の欠陥遺伝子に対し、幹細胞治療を行う事で貧血を改善する事が可能と言われています。
腎機能の向上
他の臓器同様に、加齢に伴い腎臓にも機能的・構造的な変化が生じます。具体的には腎血流量,糸球体濾過率,尿細管におけるNa再吸収能ならびに尿濃縮予備能・希釈力の低下を来たします。加齢に伴う腎機能の低下の結果、血圧は上昇し、高血圧となります。
以下の図1は加齢による腎臓の重さや大きさが40歳代前半をピークとして減少していることを示しています。また、腎臓自体が萎縮し、血管も内側に分厚くなることで血管が狭くなり、腎臓に流れる血流量が減少します。
以下図2は、腎臓の主要な機能である糸球体濾過量(GFR)が加齢に伴い低下することを表しています。我が国では,60歳代では男性の約30%,女性の約45%が推算GFR 60 ml/分/1.73 m2未満であると推測されています。このような加齢に伴うGFRの低下には,腎実質内の血行動態変化が関係しています。以下の図3は加齢に伴い,有効腎血漿流量(effective renal plasma flow:ERPF)が低下していることを示しています。ERPFは,30歳以降,10年毎に約10%ずつ低下することが示されています。
このように、高齢になるにつれて、様々な形で腎機能が低下していくことが分かります。
ここで、このような腎機能の低下に対し、幹細胞治療が効果的であると言われています。幹細胞は様々な細胞に分化することができ、腎臓の失われた機能を担う細胞に代わることが可能です。
最新の研究によると、幹細胞により、慢性腎臓病を治療することが可能であると言われています。幹細胞は、腎臓を保護し、細胞が損傷するのを防ぎ、腎臓が萎縮しないように腎臓の壁側上皮細胞が活性化され増殖する作用をきたします。また、幹細胞の投与により、加齢により減少する糸球体機能を向上し、抗炎症作用も示していることが分かりました。