心不全に対する幹治療
1.心不全における種類
心不全とは、なんらかの心機能障害により呼吸困難や倦怠感や浮腫が生じ、それに伴い心臓の運動機能が低下する症状のことです。
心不全にはステージが存在し、以下の通り分類されています。
ステージA:器質的心疾患のないリスクステージ
器質的心疾患のないリスクステージ器質性心疾患も心不全症状もありません
ステージB:器質的心疾患のあるリスクステージ
器質性心疾患を持ち、心不全症状はありません
ステージC:心不全ステージ
器質性心疾患を持ち、心不全症状を示します
ステージD:治療抵抗性心不全ステージ
補助人工心臓や心臓移植もしくは終末期ケアが必要になります
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
2.心不全における疫学
日本において、心疾患による死亡は癌に続き多く2位となっています。心不全による死亡は、心疾患の中で最も多い疾患です。2015年度の循環器専門施設における心不全による入院患者数は23万8840人で、年に1万人以上の割合で増加しています。高齢化に伴い患者数が増加しており、推定では、日本全体では2020年には120万人の心不全患者にのぼるとされています。女性は男性より心不全の発症頻度は低いものの、70歳以上では男性に比較して女性の心不全発症率が高いことが示されています。超高齢社会を迎えた我が国では、女性の心不全の増加が想定されています。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
3.心不全における病態
心不全は、その原因が左心室の機能不全か、右心室の機能不全かによって、左心不全と右心不全の2種類に分けられます。
左心不全
左室機能障害に起因する心不全では,心拍出量が減少し,肺静脈圧が上昇します。重度または慢性の左室不全では,胸水が貯留するのが特徴で,これにより呼吸困難がさらに増悪します。分時換気量は増加し,そのためPaco2が低下し,血液pHが上昇します。(呼吸性アルカローシス)
右心不全
右室機能障害に起因する心不全では,全身静脈圧が上昇し,主に各体位で下方にある組織(歩行可能な患者では足や足関節)や腹腔内臓器に体液が漏出して浮腫を来たします。肝臓への影響が最も大きいが,胃や腸管にもうっ血が生じるほか,腹腔への液貯留(腹水)が起こることがあります。肝障害により アルドステロン分解能が低下する結果,体液貯留がさらに亢進します。内臓における慢性静脈うっ滞は,食欲不振,栄養および薬物の吸収不良,タンパク漏出性胃腸症(下痢および著明な低アルブミン血症を特徴とする),消化管の慢性出血,まれに虚血による腸梗塞を引き起こす可能性があります。
心不全サポート.com
https://shinfuzen-support.com/symptom/
4.心不全における原因
心不全の原因疾患は、以下の表の通り、多岐に渡ります。多いものから順に、1)虚血性心疾患、2)高血圧、3)弁膜症でした。中でも、虚血性心疾患の割合が近年上昇しています。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
5.心不全における症状
心不全患者の症状は、以下の表の通りです。急性心不全をきたすと、左室拡張末期圧や左房圧の上昇に伴う肺静脈のうっ血、右房圧の上昇に伴う体静脈のうっ血、さらに心拍出量減少に伴う症状が認められます。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
6.心不全における予後
心不全患者の院内死亡率は約8%と報告されています。また、心不全患者の1年死亡率は7.3%、悪化による再入院率は退院後6ヶ月以内で27%、一年後では35%であり、心不全は再入院率が高いことが分かります。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
7.心不全における診断
心不全の診断では、自覚症状、既往歴、家族歴、身体所見、心電図、胸部X線を検討します。慢性心不全の診断は、以下の表の手順で行います。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
8.心不全における予防
心不全など循環器系の疾患は、予防が大切です。生活習慣だけでなく、心不全の危険因子に対して適切に薬物療法を行うことで、発症や進行、再発を予防することが出来ます。予防法は以下の通りです。
- 禁煙
- 節酒
- 適度な運動
- バランスの良い食事
- 感染症予防
- ストレスコントロール
慶応義塾大学保健管理センター
http://www.hcc.keio.ac.jp/ja/health/2019/01/prevention-of-heart-failure.html
9.心不全における罹患した著名人
- 野村克也(元プロ野球選手、監督)
- 岸部四郎(俳優)
- 市原悦子(女優)
- やしきたかじん(タレント)
訃報新聞
https://fuhou-shinbun.com/cause.html?cod=%E5%BF%83%E4%B8%8D%E5%85%A8
目次
- 心不全における一般的な治療法(保険診療)
- 心不全における当院の独自の治療内容
- 心不全における効果の出る理論
- 心臓に対する幹細胞の効果
- 心不全における効果のエビデンス、研究、論文紹介
- 心不全における一般的な治療と比較したメリット
- 心不全における治療の流れ
- 心不全における臨床的な期待できる効果
心不全における一般的な治療法(保険診療)
前述の通り、心不全は4つのステージに分類され、ステージAとBは明らかに心不全ではなく、発症リスクのステージである為、治療対象はステージCとDのみになります。治療法は以下の図の通りに行われます。ステージCにおける治療を十分に行っても安静時に高度な症状を認め、入院を反復する場合、ステージDとしての治療を選択します。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017改訂版)
https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf
心不全における当院の独自の治療内容
当院では、骨髄幹細胞と造血幹細胞を使った知的障害の治療を行っています。幹細胞による治療は、自身の骨髄から骨髄幹細胞や造血幹細胞を採取し、再び自身の体内に静脈投与する方法です。幹細胞の採取は入院する事もなく、当日行うことが可能です。
また、当院では医師が患者さんのお宅へ出向く在宅診療も行っています。どのような患者さんにも、対応できるのが、当院の強みです。
ここで、骨髄幹細胞を取る際の方法として、骨髄穿刺と脊髄穿刺を混同している患者さんが多く見受けられます。
心不全における効果の出る理論
幹細胞によって治療するのは具体的に3つの効果があります。
①パラクリン効果
幹細胞によって放出されるサイトカインという炎症反応で放出される物質によって、傷ついた細胞を治します。
②免疫調節効果
幹細胞は免疫系の細胞になることが出来、炎症反応を抑えます。これらの効果に加え、幹細胞は傷つき正常な機能が出来なくなった細胞に取って代わることが出来ます。自閉症で異常になっている免疫反応を調節します。
③血流改善による代謝の向上
骨髄幹細胞の投与により代謝が改善し、脳の血流も改善します。骨髄幹細胞は、脳の血流を再び通す作用もある事が分かります。
心臓に対する幹細胞の効果
心不全は心臓の正常な機能が出来なくなったことによる病気です。幹細胞は、損傷し機能が失われた心臓細胞や、心臓血管に対し、注入された幹細胞自体が分化する事で、その細胞自体と取って変わることが出来、心臓の機能を正常に再生させます。
心不全における効果のエビデンス、研究、論文紹介
心不全は、心臓のポンプ機能など正常な身体を維持するのに必要な機能が低下することによって起こる病気です。幹細胞は、そのような虚血性心疾患である心不全に対し、注入されることで機能不全となった心臓細胞と取って代わり、機能回復をさせる事が可能です。ここで、44人の心不全患者からランダムに24人を幹細胞治療し、残る20人をコントロール群として比較した実験を行いました。すべての患者は、駆出率(EF)が35%以下の拡張型心筋症であり、NYHA機能クラスII以上で、6か月以上症状がありました。幹細胞を注入し、6ヶ月間追跡観察をしました。
実験の評価は、1)NYHA機能クラスの変化、2)左心室機能の変化、3)死亡率、および4)心内膜心筋生検と組織病理学的評価で行いました。
死亡率は、治療群と対照群(2人の患者が死亡)の間で有意差はありませんでした。治療群ではNYHA機能クラスに有意な改善(p <0.001)があり、対照群では2人の患者(10%)のみが改善したのに対し、16人の患者(62%)は少なくとも1つの機能クラスで改善しました。
幹細胞治療前と治療後6ヶ月の心臓の駆出率の変化です。駆出率は20±7.4%から25±12%と機能が改善し、幹細胞注入で心臓機能が回復する事を示しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6874291/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109706023266?via%3Dihub
心不全における一般的な治療と比較したメリット
一般に、現在行われている治療は行動療法と薬物療法の併用です。これらは対症療法であり、知的障害を根本的に治す治療ではありません。対して、幹細胞治療は変化してしまった神経細胞を正常な細胞に置き換えることが出来、炎症反応も抑制する事から、根本的に病気を治療する手段と言えます。また、静脈内投与である為、比較的簡易に行うことも出来、画期的な治療方法と言えるでしょう。
心不全における治療の流れ
当院での治療の流れを説明します。大まかな流れとして、まず患者さんの骨髄を採取して、静脈に点滴で幹細胞を移植します。1回治療を行い、3か月後に治療効果を判定し、次回以降の治療を決定します。患者さんの病気の状況次第で臨機応変に対応いたします
心不全における臨床的な期待できる効果
論文では、以下の通りの効果が実証されています
- 心臓の拍出機能が2/3以上改善しました
- 損傷した心臓内に新しい細胞を再生しました
- 息切れや動悸など自覚症状が軽減しました
- 投薬を減らすことが出来ました
- 患者の生存率を上げる事が出来ました