心筋梗塞後に対する幹細胞治療
1.心筋梗塞における種類
心筋梗塞は虚血性心疾患の一つです。虚血性心疾患には、他に狭心症があり、心筋が虚血状態になるが壊死にまで至っていないものを狭心症と呼び、心筋が壊死したものを心筋梗塞と呼んでいます。
心筋梗塞は、発症時期によって、以下の3つに分類されます。
- 急性心筋梗塞(AMI)・・発症から72時間まで
- 亜急性心筋梗塞(RMI) ・・発症後72時間から1ヶ月まで
- 陳旧性心筋梗塞(OMI) ・・発症後1か月以上
また、梗塞には以下のものが存在します。
- 貫壁性・・心内膜側から心外膜側まで壊死が進んだもの
- 非貫壁性・・心内膜側で壊死が止まったもの
e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-005.html
2.心筋梗塞における疫学
我が国における死亡率は西欧、北米の1/5に過ぎず、いずれの国においても男性の死亡率は女性に比べ高く、およそ2倍のリスクがあります。三大危険因子は血圧値の高値、喫煙、LDLコレステロールの高値であり、年齢と共に共通の要因として取り上げられています。
虚血性心疾患の一次予防ガイドライン - 日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2012_shimamoto_h.pdf
3.心筋梗塞における病態
心筋梗塞は、病因と状況に基づいて5つの病型に分類することが可能です
- 1型:主な冠動脈障害(プラークの破裂、びらん、亀裂、冠動脈解離など)に起因する虚血により自然に生じた心筋梗塞
- 2型:酸素需要の増加(高血圧)または酸素供給の低下(冠動脈攣縮、冠動脈塞栓症、不整脈、低血圧)に起因する虚血
- 3型:予期せぬ突然心臓死に関連するもの
- 4a型:経皮的冠動脈インターベンションに関連したもの
- 4b型:ステント血栓症に関連したもの
- 5型:冠動脈バイパス術に関連したもの
4.心筋梗塞における原因
ほとんどの場合、冠動脈の動脈硬化が原因です。動脈硬化によって、血管内腔にコレステロールが溜まったプラークが形成され、プラークに何らかの刺激で裂け目が入り、血栓が形成され、血管が閉塞します。
東京逓信病院
https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/jyunnai/mi.html
5.心筋梗塞における症状
以下の症状が起こる場合、急性心筋梗塞が疑われます。
- 胸が締め付けられる痛みが続く
- 冷汗がひどく、意識を失う
- 30分以上発作が続く
- 安静や薬の服用で発作が改善しない
6.心筋梗塞における予後
全体的な死亡率は約30%で、このうち25~30%は病院到着前に、多くは心室細動によって死亡します。院内での死亡率は約10%です。再灌流療法を受けた患者の院内死亡率は5~6%で、対して適応者にも関わらず再灌流療法を受けなかった患者の院内死亡率は15%です。
初回の入院時に死亡しなかった患者における、急性心筋梗塞後の1年死亡率は8~10%です。大半は最初の3~4ヶ月に死亡します。
7.心筋梗塞における診断
症状、心電図、血液検査から診断します。
症状
- 安静時や運動時に関係なく、突然、胸に激しい痛みが起こり、15分以上続く場合
- 胸痛が持続し、不安感、動悸、息切れ、冷や汗、めまい、脱力感を伴う場合
心電図
発症後数日から1ヶ月の心筋梗塞では、梗塞の起こった部位で
-
- 異常Q波
R波の高さの25%以上の深さがあり、幅も広く0.04ms以上のQ波のこと
心筋壊死の存在を表しています - STの上昇
上向きで、高さ0.2mV以上
血液を供給している血管が完全に閉塞されることによる高度の障害の存在を表しています - 冠状T波
心筋梗塞の時に見られる左右対称の陰性T波のこと
心筋虚血の存在を表しています
- 異常Q波
などの特徴的な所見が見られます。
目次
- 心筋梗塞における一般的な治療法
- 心機能不全における当院の独自の治療内容
- 心筋梗塞後の心機能不全における効果の出る理論
- 心臓に対する幹細胞の効果
- 心筋梗塞後の心機能不全における効果のエビデンス、研究、論文紹介
- 心筋梗塞における一般的な治療と比較したメリット
- 心筋梗塞における治療の流れ
- 心筋梗塞後の心機能不全における臨床的な期待できる効果
心筋梗塞における一般的な治療法
主な治療法は、カテーテル治療法、バイパス手術、薬物治療があります。
カテーテル治療
現在最もよく使われているのは、ステント療法です。カテーテルと呼ばれる直径数mmの管を使用し、血管の狭くなっているところに、ステントと呼ばれる金属製の網状の筒を入れ、血流を改善します。局所麻酔でできる治療で、1~3時間程度の治療です。治療後は数日で退院となります。
①狭窄部にステントをカテーテルを用いて送り込みます
②狭窄部でバルーンを膨らませ、血管の内腔の広さを確保します
③バルーンをしぼませてステントを残します
カテーテル治療は身体に大きな負担をかけず魅力的な治療法ですが、ステントの中に血栓ができないようにするため抗血小板剤を飲み続ける必要があります。冠動脈が完全に詰まってカテーテルを通すことができない場合、繰り返しカテーテル治療を行ってもすぐに冠動脈が狭くなる場合など、カテーテル治療には限界もあります。
バイパス手術
バイパス手術は、血流が悪くなった血管の代わりに血液が流れるために迂回路となるバイパスとなる血管をつなぎます。狭窄部を迂回するように、バイパス手術として使う血管を冠動脈につなぎます。
心機能不全における当院の独自の治療内容
当院では、骨髄幹細胞と造血幹細胞を使った知的障害の治療を行っています。幹細胞による治療は、自身の骨髄から骨髄幹細胞や造血幹細胞を採取し、再び自身の体内に静脈投与する方法です。幹細胞の採取は入院する事もなく、当日行うことが可能です。
また、当院では医師が患者さんのお宅へ出向く在宅診療も行っています。どのような患者さんにも、対応できるのが、当院の強みです。
ここで、骨髄幹細胞を取る際の方法として、骨髄穿刺と脊髄穿刺を混同している患者さんが多く見受けられます。
心筋梗塞後の心機能不全における効果の出る理論
幹細胞によって治療するのは具体的に3つの効果があります。
①パラクリン効果
幹細胞によって放出されるサイトカインという炎症反応で放出される物質によって、傷ついた細胞を治します。
②免疫調節効果
幹細胞は免疫系の細胞になることが出来、炎症反応を抑えます。これらの効果に加え、幹細胞は傷つき正常な機能が出来なくなった細胞に取って代わることが出来ます。自閉症で異常になっている免疫反応を調節します。
③血流改善による代謝の向上
骨髄幹細胞の投与により代謝が改善し、脳の血流も改善します。骨髄幹細胞は、脳の血流を再び通す作用もある事が分かります。
心臓に対する幹細胞の効果
心筋梗塞は心臓の正常な機能が出来なくなったことによる病気です。幹細胞は、損傷し機能が失われた心臓細胞や、心臓血管に対し、注入された幹細胞自体が分化する事で、その細胞自体と取って変わることが出来、心臓の機能を正常に再生させます。
心筋梗塞後の心機能不全における効果のエビデンス、研究、論文紹介
心筋梗塞は、心臓のポンプ機能など正常な身体を維持するのに必要な機能が低下することによって起こる病気です。幹細胞は、そのような虚血性心疾患である心不全に対し、注入されることで機能不全となった心臓細胞と取って代わり、機能回復をさせる事が可能です。
ここで、44人の心不全患者からランダムに24人を幹細胞治療し、残る20人をコントロール群として比較した実験を行いました。すべての患者は、駆出率(EF)が35%以下の拡張型心筋症であり、NYHA機能クラスII以上で、6か月以上症状がありました。幹細胞を注入し、6ヶ月間追跡観察をしました。
実験の評価は、1)NYHA機能クラスの変化、2)左心室機能の変化、3)死亡率、および4)心内膜心筋生検と組織病理学的評価で行いました。
死亡率は、治療群と対照群(2人の患者が死亡)の間で有意差はありませんでした。治療群ではNYHA機能クラスに有意な改善(p <0.001)があり、対照群では2人の患者(10%)のみが改善したのに対し、16人の患者(62%)は少なくとも1つの機能クラスで改善しました。
幹細胞治療前と治療後6ヶ月の心臓の駆出率の変化です。駆出率は20±7.4%から25±12%と機能が改善し、幹細胞注入で心臓機能が回復する事を示しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6874291/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109706023266?via%3Dihub
心筋梗塞における一般的な治療と比較したメリット
一般に、現在行われている治療は行動療法と薬物療法の併用です。これらは対症療法であり、知的障害を根本的に治す治療ではありません。対して、幹細胞治療は変化してしまった神経細胞を正常な細胞に置き換えることが出来、炎症反応も抑制する事から、根本的に病気を治療する手段と言えます。また、静脈内投与である為、比較的簡易に行うことも出来、画期的な治療方法と言えるでしょう。
心筋梗塞における治療の流れ
当院での治療の流れを説明します。大まかな流れとして、まず患者さんの骨髄を採取して、静脈に点滴で幹細胞を移植します。1回治療を行い、3か月後に治療効果を判定し、次回以降の治療を決定します。患者さんの病気の状況次第で臨機応変に対応いたします
心筋梗塞後の心機能不全における臨床的な期待できる効果
心筋梗塞後の心機能不全における臨床的な期待できる効果 10/16更新
論文では、以下の通りの効果が実証されています
- 心臓の拍出機能が2/3以上改善しました
- 損傷した心臓内に新しい細胞を再生しました
- 息切れや動悸など自覚症状が軽減しました
- 投薬を減らすことが出来ました
- 患者の生存率を上げることが出来ました