てんかんに対する間葉系骨髄血幹細胞移植治療
骨髄幹細胞移植治療はてんかんの症状を改善する可能性がある、画期的な治療法です。てんかん発作のない快適な生活を送ってみませんか?
目次(脳性麻痺の間葉系幹細胞について)
間葉系骨髄血幹細胞移植治療がてんかんに治療効果を発揮する原理
てんかんへの間葉系幹細胞治療の治療内容
間葉系幹細胞治療により、従来の医療では治療することの出来なかった病気を治すことが出来ます。当院では、骨髄幹細胞を使ったてんかんの治療を行っています。
間葉系幹細胞治療は今まで根治出来なかった病気を根本的に治療する手段です。静脈投与により治療を行う為、安心安全に行うことが可能です。
間葉系幹細胞治療とは、自身の骨髄から採取した骨髄幹細胞や造血幹細胞を、再び自身の体内に投与します。間葉系幹細胞の採取には入院は必要でなく、日帰りで採取する事が可能です。
当院では、どのような患者さんにも、対応する事が出来ます。
間葉系骨髄血幹細胞移植治療がてんかんに治療効果を発揮する原理
間葉系幹細胞とは、骨髄、脂肪組織、臍帯血、胎盤、羊水から分離される多能性細胞で、自己複製能力を持ち、神経細胞を含む多くの特殊な細胞型に分化することができます。
間葉系幹細胞の移植は、一般的に発作の回数を減らし、神経細胞をよりよく保存することにつながります。
間葉系幹細胞移植治療がてんかんに治療効果を発揮する原理として、間葉系幹細胞がてんかんによって引き起こされる以下の現象を抑えることがあります。
- 興奮毒性
- 神経は、シナプスと呼ばれる場所で神経同士の情報の交換 (神経伝達) を行います。これは神経伝達物質と呼ばれる分子を使って行われます。神経は神経伝達物質を放出し、その先にある受容体に結合することで、神経伝達物質を受け取った神経を興奮させることができます。しかし、この刺激が強すぎると、神経細胞は刺激に耐えられなくなり、神経細胞そのものの損傷や死滅を引き起こします。このことを興奮毒性と言います。
- 酸化ストレス
- 体内の活性酸素量が、体の酸化防御機構を超えた状態のことを、酸化ストレスといいます。活性酸素とは、他の物質を酸化させる力がとても強い酸素のことで、呼吸によって体内に取り込まれた酸素も活性化することがあります。この活性酸素は人の体に有益な作用をもたらしてくれることもありますが、増えすぎると健康な細胞にもダメージを引き起こします。それを防ぐために人の体には酸化防御機能が備わっています。酸化ストレスは、活性酸素が作られすぎたり、酸化防御機構が追いつかないなど、活性酸素と酸化防御機構のバランスが崩れることで発生します。その結果、未処理の活性酸素が体の中に蓄積され、悪影響を及ぼします。
- 神経炎症
- 間葉系幹細胞は神経免疫反応を調節する能力を持っています。炎症性因子の放出を防ぎ、抗炎症性因子の放出を促すことにより、神経炎症を抑制することができます。
また、間葉系幹細胞はさまざまな因子を分泌し、脳を保護するために他者を排除する壁である血液脳関門を通過することができることも分かっています。そのため、静脈への投与でも間葉系幹細胞は脳の記憶などにかかわる場所である海馬に移行し、治療効果を発揮することが、てんかんモデル動物において実証されました。難治性てんかんにおいて、ヒト骨髄または脂肪組織由来の再生細胞を用いた臨床試験では、間葉系幹細胞の静脈内投与により認知機能や精神運動機能を改善し、てんかん発作も抑制されました。前臨床試験、臨床試験ともに、間葉系幹細胞療法は安全であることも示されています。
さらに、間葉系幹細胞を用いた幹細胞療法では、ヒトからヒトへの移植 (同種移植)、または自分から自分への移植 (自家移植)が可能であるため、臨床的な実現の可能性がとても大きいです。
間葉系幹細胞は、高い神経系との連携を示し、長期間に渡る比較的高い自己再生能力をもちます。また、様々な栄養・免疫因子の放出をし、治療分子を届ける能力もあります。これらの効果がにより、てんかんに対しての現在の治療法の限界を克服できる可能性があります。
引用論文:
局所てんかんに対する間葉系幹細胞治療: 前臨床モデルと臨床研究のシステマティックレビュー
てんかん治療における間葉系幹細胞の治療の可能性と抗てんかん薬との相互作用
てんかんに対する間葉系幹細胞治療のエビデンス、医学研究、医学論文の紹介
間葉系幹細胞治療の効果に関してより具体的かつ専門的内容。この項目では、効果についてより具体的かつ、専門的に、医学論文を解説する形で間葉系幹細胞治療の効果について解説していきます。内容がより高度になってきますが、ここが治療を受ける前に理解していただく必要がある「キーポイント」です。ここは、どうしてもご理解いただく必要がある分野です。
間葉系幹細胞から神経細胞が成長する事の研究
間葉系幹細胞は自分の細胞由来で、様々な細胞になることが出来ます。そのため、間葉系幹細胞治療は変化してしまった神経細胞を正常な細胞に置き換えることが出来ます。
では、そのような万能な細胞である骨髄幹細胞は、どの様にして様々な細胞に分化するのでしょうか。ここで、骨髄幹細胞が神経細胞に分化するメカニズムについて具体的に説明します。
間葉系幹細胞は生きた動物の骨髄から採取され、軟骨細胞、骨芽細胞(骨の元となるもの)、筋肉、中枢神経などになることが出来ます。
これは、実際に間葉系幹細胞から神経細胞が発生していく様子を観察した研究です。間葉系幹細胞は壊れた神経細胞になることが出来ます。
以下、間葉系幹細胞が神経を培養する培地で、次々と分裂するのを観察した実験結果です。
A:培地に間葉系幹細胞を注入して7.5時間、9.5時間、10.5時間、15.5時間後の結果です。
図から分かる通り、間葉系幹細胞は神経細胞になる事が出来ます。
引用論文
間葉系幹細胞治療でてんかんの症状が改善した研究
原理より実際の症状。この研究は、間葉系幹細胞治療の原理より、実際の症状にスポットを当てたものです。実際に間葉系幹細胞治療を行った医学研究を解説していきます。
ここで、てんかんの患者に、間葉系幹細胞を移植する事で治療した論文を紹介いたします。
てんかんに対する間葉系幹細胞治療の治療効果①
間葉系幹細胞治療は、様々な種類と投与方法があり、それぞれ治療効果が異なります。
- 間葉系幹細胞の静脈内注射:
- てんかんの発症を抑制し、認知機能を維持します。
- 脂肪由来の間葉系幹細胞の海馬(記憶等にかかわる脳の部位)への脳内移植:
- 学習・記憶機能の向上が期待されます。
- 自己骨髄単核球由来の間葉系幹細胞の静脈内注射および髄腔内注射:
- 発作頻度を有意に減少させ、独自の免疫調節作用を有します。
- 自己骨髄由来の間葉系幹細胞の静脈内注射と髄腔内注射:
- 発作頻度を緩和、認知機能の改善が期待されます。
- 自己骨髄由来の間葉系幹細胞の動脈内注入:
- 発作の減少と記憶力の大幅改善が臨床試験で示されました。
- 自己骨髄由来の間葉系幹細胞の静脈内注射:
- 発作の減少 が臨床試験で示されました。
- 自己脂肪由来の間葉系幹細胞の髄腔内注入:
- 臨床試験において 6人中1人は発作を起こしませんでしたが、他の患者では満足のいく発作の減少や明らかな寛解は示されませんでした。
引用論文
てんかんに対する間葉系幹細胞治療の治療効果②
間葉系幹細胞は、様々な細胞種に分化します。また、損傷した組織に到達し、免疫調節を行い、炎症を抑える能力を持つことから、てんかんを含む様々な神経疾患における神経炎症に対処する治療ツールとして非常に大きな治療効果が期待されています。
てんかん治療における間葉系幹細胞の有益な効果として、てんかんおよび発作の発生率、重症度、および期間の減少があります。
間葉系幹細胞が抗てんかん薬に抵抗性のあるてんかんの正常な組織機能回復を目的とする治療法のいい候補となりえます。
引用論文
てんかんにおける他の治療と比較したメリット
既存の治療と比較した場合の間葉系骨髄幹細胞移植治療の一番のメリット、それは脳機能を根本的に改善できること、すなわち脳神経細胞、脳血管の数を増やせることです。
てんかんは脳内の神経細胞の過剰な電気的興奮に伴って、意識障害やけいれんなどを発作的に起こす慢性的な脳の病気です。一般に、現在行われている治療は行動療法と薬物療法の併用です。これらは対症療法(その時に起こっている症状を一時的に和らげるもの)であり、てんかんの脳機能を根本的に改善する治療ではありません。
対して、間葉系幹細胞治療は変化してしまった神経細胞を正常な細胞に置き換えることが出来、炎症反応も抑制する事から、根本的に病気を治療する手段と言えます。また、静脈内投与である為、安心して治療を行うことも出来る治療方法と言えるでしょう。
実際の間葉系骨髄幹細胞移植治療の方法
痛みと不安に配慮した方法。以下で、当院での治療の流れを説明します。
大まかな流れとして、まずお子様は静脈麻酔で眠っていただき、痛みを感じない状態にします。なお、当院では安全のため、必ず麻酔時に小児の救急に十分な経験を持った医師が治療に携わるようにしています。
細い針を骨盤に穿刺し、お子様の骨髄を採取して、間葉系幹細胞を移植します。この際に適切な痛み止めを使い、痛みに最大限配慮した方法で行います。
また、実施する医師は、小児の間葉系幹細胞治療を得意とした医師が行います。
まず1回治療を行い、一定期間後に治療効果を判定し、次回以降の治療を決定します。患者さんの病気の状況次第で臨機応変に対応いたします。
ここで、骨髄幹細胞を取る際の方法として、骨髄穿刺と脊髄穿刺を混同している患者さんが多く見受けられます。
てんかんにおける間葉系骨髄幹細胞移植治療で期待できる具体的な症状の改善
医学論文では、以下の通りの効果が実証され報告されています。
間葉系幹細胞は、海馬硬化症などのてんかんの構造的な原因に対する治療効果が期待されます。
また、数多くの研究により、間葉系骨髄幹細胞を投与することで、発作の頻度の著しい減少、認知・運動機能の改善、学習能力の回復、神経細胞数の増加、酸化ストレスの軽減などが、明らかにされています。また、臨床試験の結果から、2回繰り返すことにより、発作回数とてんかん様脳波活動のさらなる減少が認められ、その効果は少なくとも1年間持続することが示されました。
併用療法も高い有用性が確認されています。
抗てんかん薬であるレベチラセタムの投与と1~2回の間葉系骨髄幹細胞の静脈内および髄腔内投与が、てんかん発作の頻度が減少し、さらに間葉系骨髄幹細胞の投与を繰り返すことにより、患者さんの状態がさらに改善しました。またこの療法は薬剤抵抗性てんかんの患者さんに安全かつ有効であることが証明されています。
薬剤抵抗性てんかんの小児患者さんに対しても、併用療法が行われています。自己骨髄有核細胞の髄腔内および静脈内投与に続き、3カ月ごとに4回の間葉系骨髄幹細胞の髄腔内注射を行ったところ、発作回数が減少し、全例で認知的改善が認められました。
このように、間葉系幹細胞移植はてんかん治療において安全で有望な治療法であると考えられます。