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小さい時の少しの改善が、その子の一生にどれくらいの利益をもたらすか

[2026.08.19]

 

 

HEALTH-ECONOMIC MODEL ・ 解説付きスライド

就学前ASD児の幼少期の機能改善がもたらす一生涯の価値

適応機能(Vineland検査)に一本化し、幼少期の機能改善が本人・家族の生涯にわたる金銭的便益と生活の質(QOL)にどう波及するかを、一次文献に基づいて順に定量化します。各スライドの下に解説を添えています。

スライド1
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表紙

本資料のテーマ:就学前ASD児の幼少期の機能改善が、本人・家族に生涯にわたってどれだけの価値をもたらすかを、健康経済学の枠組みで定量化する。

評価の柱は2つ。①本人・家族の金銭的便益(就労・介護離職の回避・自己負担の減少など)と、②金銭を超えた価値(QOL・幸福度)。適応機能(Vineland)に一本化して測る。

スライド2
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何を定量化するのか

就学前の機能改善が「将来のどんな価値に、いくら結びつくか」を見積もる。

評価軸は2本立て。① 金銭的便益(本人・家族)= p.3〜11 で数式・試算まで展開。② 金銭を超えた価値(QOL)= p.12〜14 で測り方と変化を提示。

スライド3
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つまずきポイント:VIQと適応機能は交絡する

言語性IQ(VIQ)と適応機能は相関し合う(交絡する)ため、両方を別々に足し上げると二重計上になりやすい。

そこで本資料では、指標を「適応機能」に一本化し、VIQ・言語はその上流にある予測因子として扱う。これにより二重計上を避ける。

スライド4
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解決方針:適応機能に一本化する

アウトカムを適応機能(Vineland ABC)に集約。VIQ・言語の改善は「適応機能を押し上げる要因」として間接的に効く、という構造にする。

こうすることで、便益の起点を1つに定め、モデル全体の筋を通す。

スライド5
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使う指標:Vineland 適応行動尺度(ABC)

Vineland適応行動尺度の総合得点(ABC)を用いる。平均100・標準偏差(SD)15の標準得点。

知的障害(ID)の有無で生涯費用が大きく変わることが知られており(Buescher 2014)、ABCをその代理指標として使う。

スライド6
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変換①:ABC改善 → ID/非IDの移行確率

改善によって「知的障害なし(非ID)」の側に移れる確率を、正規分布モデルで表す。P = Φ((到達ABC − 70) ÷ σ)、σは予後のばらつき(既定12点)。

改善が大きいほど移行確率の上昇ΔPも大きくなる:+5点で+16%、+7点(当院平均)で+22%、+9点で+27%。だから改善幅ごとに①の便益が変わる。

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変換②:生涯費用差の総額と年齢別内訳

知的障害あり/なしで生じる生涯費用の差は、名目(割引なし)で約3億2,832万円(本人・家族・公的をすべて含む総額)。

年額は幼少期がやや高いが、期間が長い成人期(18〜65歳の48年)に累計が集中し、成人期だけで総額の約77%を占める。

この総額に移行確率を掛け(STEP1)、さらに本人・家族分55%を取り出す(STEP2)。例:×27%→期待総額約¥89.8M→×55%→本人・家族 約¥49.4M。

スライド8
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便益はいつ生じるか(タイムライン)

便益の大部分は、介入から数十年後の成人期に発生する。就労による稼得や、生活支援費の減少がその中心。

本資料は名目(割引なし)で統一。将来の便益を割り引いて現在価値で見る立場もあり、その場合は遠い便益ほど目減りする(注記として明示)。

スライド9
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便益の帰属:3つの財布に分ける

費用差は3つの負担者に配分する:本人35%・家族20%・公的45%。本人+家族=55%。

本資料の①(本人・家族の便益)は、この55%分を指す。公的財政が負う分は混同しないよう分けて扱う。

スライド10
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ABC 1・5・9点改善はどのくらいのレベルか

改善幅の臨床的な意味を、SD換算・MCID(意味ある最小変化 2〜3.75点)・日常の行動例で示す。

+1点=0.07SD(測定誤差と区別しにくい)、+5点=0.33SD(意味ある変化)、+9点=0.60SD(半SD超の大きな変化)。4歳前後・6歳前後の具体的な行動例も併記。

スライド11
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試算例:5・7・9点の比較(中央が当院平均の7点)

改善幅が大きいほど移行確率ΔP(16→22→27%)が上がり、①も増える。各改善幅で ΔP×生涯費用差=期待総額 を求め、本人・家族分を取り出す。

本人・家族の期待便益:+5点で約¥29.2M、+7点(当院平均)で約¥39.8M、+9点で約¥49.4M。

スライド12
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金銭を超えた価値①:QOL・幸福度をどう測るか

生活の質は妥当性の確認された自己記入式尺度で定量化できる。ASD成人で検証済みのWHOQOL-BREF(身体的・心理的・社会的関係・環境の4領域)を用いる。

金銭への橋渡しはQALY(質調整生存年)。これは医療技術評価(HTA)で確立した一般的手法で、日本の中医協(費用対効果評価)や英国NICEが、新薬・新治療を保険で認めるか・価格をどうするかの判断に実際に用いている。ただしASDでの適用は発展途上で、方向性の指標として扱う。

スライド13
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金銭を超えた価値②:ABCが9点改善するとQOLが向上する

適応機能の向上は、就労・対人関係・支援の獲得というQOLの予測因子を経由して、生活の質を押し上げる(Mason 2018)。

留保:ASDではQOLと客観的アウトカムの相関が弱い報告もあり、QOLの数値化は方向性を示すもので、金銭換算ほどの精度はない。

スライド14
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② を金銭換算し、①+② を合計する(9点/5点)

②QOLの金銭換算は「適応x点 → 効用 → QALY → ×支払意思額(WTP ¥5M/QALY)」。1点あたり約¥1.2M。

①+②合計:9点(70→79)で約¥60.2M(①¥49.4M+②¥10.8M)、5点(70→75)で約¥35.2M(①¥29.2M+②¥6.0M)。①は移行確率経由で非線形、②はxに比例。

スライド15
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x(改善幅)を動かすと ①・②・合計はどう変わるか

横軸は改善幅x(ABC点)。①は移行確率を介して非線形(閾値付近で急に効き、その後は緩やか)、②はxに比例。合計は両者の和。

最初の数点が最も効くことが読み取れる。代表例 x=9 で合計 約¥60M。

スライド16
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境界例ほど効く ― ABC 1点改善の金銭価値

横軸は「その子が今いる位置(到達ABC)」、縦軸はそこで1点改善したときの①の金銭価値。閾値ABC=70で最大となる釣鐘型。

閾値付近ほど、わずかな改善が「ID→非ID」の境界を越えさせる確率が高く、1点の価値が最大になる。治療で下から閾値に近づくほど、次の1点の価値が上がる。

スライド17
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前提と限界

主な前提:介入4歳・余命66歳・名目(割引なし)・σ=12・閾値ABC70・配分35/20/45・レート150円/$。

限界:最も弱い連結は「改善→適応→就労確率」の傾き(文献は閾値・カテゴリ的で連続傾きは弱い)。QOLの数値化はASDで最も不確実。①(回避費用)と②(QALY価値)は枠組みが異なり、単純合計は粗い上限の目安。

スライド18
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まとめ

① 適応機能に一本化して交絡を避け、② 適応の改善 → 移行確率 → 生涯費用差(名目)で金銭化し、③ 本人・家族分を取り出す。

就学前の機能改善は、本人・家族に生涯にわたる金銭的便益(試算例で約¥49M・名目)と、QOLの向上という金銭を超えた価値をもたらす。数値はモデル前提に基づく試算であり、特定の治療効果や回収を保証するものではない。

移行確率モデル版 ・ 全18スライド。数値はモデル前提に基づく試算であり、特定の治療効果や回収を保証するものではありません。

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